学術情報

2024.08.20

第13回 てんかん犬へのDHA給与

 てんかんは一時的に脳の神経細胞ネットワークが異常に興奮することによって起こる病気であり、ペットの有病率はイヌで1~2%、ネコでは0.5%程度といわれています。てんかん発作の症状としてはけいれん(全身が硬直しピクピクと反応する)、犬かき運動(前肢後肢をバタバタと動かす)、意識消失(口から泡を吹く)がその代表です。

 通常のてんかん発作は2~3分で回復しますが、群発発作(数日間に10回程度も発生するもの)やてんかん重積(1回の発作が終わるとまた次の発作が起こり、これがつながって30分間以上も続くもの)には注意が必要です。

 てんかん発作を起こすイヌ6頭(2~9歳)にDHAサプリメントを6か月間給与し経過を観察しました。6頭中試験を完了した4頭について、ひと月あたりの発作回数を調べると3~6回→0~1回に減少、中には試験開始前45回/月の発作を起こしていたものが11回まで減少したものもいました。継続的なDHA給与はイヌの特発性てんかんの発作頻度を抑える働きがあると考えられました。

 

《 Effects of high-dose docosahexaenoic acid supplementation as an add-on therapy for canine idiopathic epilepsy: A pilot study 》 

                          (出典:米澤智洋ら 東京大学 2023年)

 

 てんかん発作を起こす犬6頭(中央値6歳)にDHAサプリメントを6か月間給与して発作頻度の変化を確認した(DHA給与量は体重1kgあたり1日100~200㎎)。試験を完了した4頭の発作頻度は試験開始3か月でおよそ50%に減少した。また1頭を除き、開始6か月では0~1回の頻度であった。

 試験期間中の被験犬の体重、全身状態、各種血液検査の値に異常は確認されなかった。以上の成績からDHAの継続給与は安全性に問題はなく、イヌの特発性てんかんの発作頻度を低減させる可能性があると考えられた。

 

てんかん発作の発生頻度(回数/月)

被験犬

試験開始前

1か月後

3か月後

6か月後

A

4

3

2

0

B

3

2

2

1

C

45

48

14

11

D

6

6

2

0

 

ページの上部に戻る