学術情報

2023.03.27

第9回 フード栄養成分の消化率と肥満

 決められたとおりのフード量を与えているのに、いつの間にか愛犬が太ってゆくという話をよく聞きます。同様に「肥満対策フード」を与えていても体重がなかなか元に戻らないという声も少なくありません。体重の増加は摂取エネルギー>消費エネルギーによるものです。市販のペットフードは摂取カロリーに過不足がないように、年齢や体重ごとに給与量が計算されているはずなのですが、どうしてこのような事例が起きるのでしょうか?

 ペットフードはイヌ・ネコが栄養成分を消化できる割合=消化率を元に内容が設計されています。具体的には炭水化物(85%)、脂肪(90%)、蛋白質(80%)、食物繊維(0%)が基準となる消化率です。しかし、実際にゴールデン・レトリーバー、ビーグル、ダックス・フントを用いて実測したところ、この基準値を上回る消化率であったという報告があります。特定の犬種では決められた量のフードでも実質的には過剰量を食べていることになり、これが肥満の背景である可能性が考えられます。

 

《 犬種の違いが飼料消化率に及ぼす影響 》 

                                                                                            (出典:山部亜由美ら 近畿大学 2001年)

 

 ゴールデン・レトリーバー(8頭:平均年令1歳8ヶ月)、ビーグル(8頭:平均年令3歳)、ダックス・フント(9頭:平均年令1歳8ヶ月)に市販のドライフードを与え、一般栄養成分の消化率を測定した。結果ではNRCが設定している消化率を上回る値を示した。これよりエネルギー要求量から設計されたフードの給与量では、過剰のエネルギーを摂取していることが推測された。

栄養成分の実測消化率

( )内は基準値

G・レトリーバー

ビーグル

ダックス・フント

炭水化物(85%)

89.7%

90.7%

89.8%

脂肪(90%)

92%以上

蛋白質(80%)

82.0%

85.4%

82.5%

食物繊維(0%)

31.9%

36.0%

32.8%

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