学術情報

2023.01.28

第7回 認知機能低下犬へのEPA・DHA給与効果

 高齢により認知機能が低下したいわゆる「認知症犬」では、夜鳴きや昼夜の逆転、トイレの失敗などの行動変化が見られます。同時に脳神経細胞ではアミロイドβなどの沈着物や活性酸素が増加し、対して脳細胞数や脳血流量は減少するといわれます。現在はペットのさまざまな認知機能の低下抑制を期待するEPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)を主とするサプリメントが市販されており、これを給与された認知症犬では臨床症状や血液流動性の改善結果が報告されています。オメガ3(ω‐3)脂肪酸と呼ばれるEPA・DHAには高齢犬の認知機能および生活改善の可能性があると考えられます。

 

《 痴呆犬に対するω‐3不飽和脂肪酸投与の臨床生理学的検討 》 

               (出典:平林美紀ら 動物エムイーリサーチセンター 2004年)

 

 正常犬群(13歳、16歳の老犬2頭)および痴呆犬群(16歳の老犬2頭)にω‐3不飽和脂肪酸(EPA、DHA)を含むサプリメントを1日1頭2g×28日間給与した。給与終了後の痴呆犬群では夜鳴きの消失など臨床症状の改善が認められた。また血液通過時間は両群ともに給与前と比較しておよそ50%の減少が確認された。

 

項目

正常犬群(2頭)

痴呆犬群(2頭)

痴呆診断スコア

給与前後で変化なし

1頭において約40%減少

臨床症状

給与前後で変化なし

夜鳴きの消失

排尿習慣の改善

毛艶の良化

血液通過時間

(秒)

給与前) 67.3

給与後) 30.8

給与前) 52.5

給与後) 26.1

痴呆診断スコア …食欲、行動、排泄、鳴き声などをスコア化したもので、

          数値が高いほど認知機能低下の可能性が高いと診断される

血液通過時間 …血液100μlが微細な隙間構造を通過するのに要する時間で、

          数値が小さいほど血液がサラサラであると評価される

 

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