学術情報

2023.07.30

第12回 パンティングと夏場の体温調節

 梅雨が明け本格的な夏になりました。1年1年夏の最高気温が上昇している感がありますが、熱中症対策はペットにとっても重要です。私たちヒトは、皮膚毛細血管の血流量増加と発汗によって体温の上昇を抑えています。体内で発生した熱を血液を通して皮膚表面に運び、そこから直接空気中に放熱したり、また汗が蒸発する時の気化熱を利用して体温を調節しています。

 しかしイヌは体表が被毛で覆われており、またヒトと異なり体全体から汗をかくことができません。夏場の唯一の体温調節方法はパンティングになります。飼育温度とイヌの呼吸回数の関係を調べた研究報告によると、標準的な呼吸回数が20~30回/分であるのに対して、室温33℃では300回/分近くまで増加していました。

 イヌはパンティングにより熱く湿気を含んだ呼気を吐き出すことで体温の上昇を抑えています。これより熱中症予防には十分な水分補給として、経口補水液や糖分(=エネルギー源)を含んだ冷たいシャーベットなどをおやつとして与えるのが良いでしょう。

 

《 実験用イヌに適した環境温度について 》 

                      (出典:藤田省吾ら 鹿児島大学 1980年)

 ビーグル犬5頭(12~15か月齢)を13℃、23℃、33℃の環境で10日間飼育した。試験期間中、体温に違いは見られなかったが、10日目の呼吸回数には13℃(14.8回/分)、23℃(18.0回/分)、33℃(336.0回/分)と顕著な差が認められた。飼育温度が高い条件下のイヌは激しいパンティングにより体温調節を行っていることが確認された。

 

供試犬の平均体温(℃)

(飼育温度)

1日目

5日目

10日目

13℃

38.9

38.6

38.8

23℃

38.8

38.7

38.7

33℃

39.0

38.7

38.9

 

供試犬の平均呼吸回数(回/分)

(飼育温度)

1日目

5日目

10日目

13℃

20.3

15.8

14.8

23℃

29.3

26.3

18.0

33℃

277.3

315.8

336.0

 

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